スポンサーサイト 

--/--/--
--. --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

[edit]

CM: --
TB: --

page top

シェアリング(3) 

2009/02/03
Tue. 19:02

シェアリング(3)


久しぶりにUPします。
相変わらず暗くて申し訳ないです。


シェアリング 1 / 2

シェアリング(3)



きっとこのまま俺と暮らす事になれば、光流と家族の間には少なからず『溝』が出来てしまうだろう。
自分の幸せと喜びに目隠しされて、俺とした事がそんな簡単な事さえも気付けなかった。
家族を大切に思っている光流。
本当は誰よりもそれに対して、憧れを持っている光流。
そして、俺にとって何よりも大切な存在である、光流。
だからこそ。
一緒には暮らせない。
お前の事を考えれば考える程、もう一緒に暮らす事は選べない。

お前が幸せになれる。
その事が、俺にとっての一番の幸せだと気付いてしまっているからこそ。
もう、お前と同じ未来を望む事は、出来ないんだ。



「…理由を聞かせろよ」
「えっ……?」
「俺と暮らせない理由を、さ」
そんな理由はない。
本当はお前と暮らしたい。
叶うなら、ずっと一緒にいたい。
「俺、何かした? お前の気に障る様な事」
「いや…」
そう、するはずがない。
お前の全てを調べても、きっとそんな所は見つからないだろう。
「…じゃあ。どうして?」
もしかしたら、この俺が一番聞きたい事かも知れない。
どうして光流と一緒に暮らせないのか。
どうして離れなければいけないのか。
俺が光流を望む事は、ただのエゴなんだろうか。
家族の絆。俺はそれに勝てないのだろうか。
「……」
思うな。考えるな。
けして光流には言うな。この本心を。

どんなに辛くても。悲しくても。
どんなに心が痛んでも。
どんなに俺自身が光流を求めていたとしても。

堪えなくていけない。
これが光流の為。
だからーー。

「ーー心境の変化だ」
自分を見つめる光流の顔は、どこまでも真剣だ。
その瞳に思わず飲まれそうになる。
堪らなくなり、視線をわずかに横に逸らし、忍は言葉をつなげた。
「…特に理由はない」

嘘を突き通す事。
これが今、俺が光流にしてやれる最大の事。
たとえこの事で俺達の未来が違ってしまっても、俺は後悔しない。
お前が、笑ってさえいられるなら。
幸せになれるなら。
それだけで、俺は…。




『お前とは一緒に住めなくなった』
忍のその一言で、一瞬にして頭の中が真っ白になった。
だから忍が何を言っているのかを理解するまでに、かなりの時間を要した。
その為、目の前のカーテンが風に踊らされる様を、随分長い間見つめていた様に思う。
そして呆然としたまま問いかけていた。
どうして暮らせないのかと。
どうして俺と一緒に住む事が出来ないのかと。
そして、俺の問題点を。
しかし、忍は答えない。
それどころか『心境の変化だ。特に理由はない』とそう述べ、それ以上は答えてくれない。
でも流石にそんな事を『はい。そうですか。分かりました』と飲める訳もなくて。
「そんなの納得出来るかよ」
「…そうか」
何が『そうか』なんだよ?
どうしてお前が、そんな悲しそうな顔するんだよ?
間違いなく、辛く、悲しいのは、言われた俺の方だろ?
何故言い出したお前が、傷ついている様な顔をするんだよ?
どうして、なんで。お前が俺を否定するんだよ。
選べよ俺を。
俺にはお前しかいないんだよ。
『心境の変化』なんて、簡単な言葉で一蹴するなよ。
頼むよ。
頼むよ忍。
お前は。
どうか、お前だけは。

ーー俺の事を、いらないと言わないでくれよ。


女々しい言葉が次から次へと頭に浮かぶ。それを口にしない様にどうにか堪え、なんとか打ち消す。
感情のままに突き詰めて、問いつめたい気持ちをぐっと堪えた。
「……っ」
だって、どう考えてもおかしい。
忍の言動も態度も。
今更、この俺にそんなのが通用するとでも…。
「ーーじゃあ理由を言う」
「……ああ」
嘘だって言えよ。
これは、いつものたちの悪い冗談だと。
気まぐれで言ってみただけだって。
そう言えよ。
本当は、お前も俺を求めてるんだろ?
必要としてるんだろ?
俺と同じ様に。それ以上に。
そう言ってくれよ。
どうか頼むから。
どうか。
忍ーー。

光流の心の声が叫び狂う。
しかし、忍は光流が望む言葉をけして口にはしない。
視線は不自然な程噛み合ないまま、時間だけが過ぎていく。
過ぎ行く時間。それと比例する様に、光流の顔はドンドン曇っていく。絶望感が心を支配する。
忍はそんな光流に気付いたのだろうか。気がつけば、その唇がゆっくりと動いていた。
「…俺達の在り方に、疑問を感じたんだ」
「……えっ」
「俺達はお互い、依存しすぎている様に思う…」
「そ、そんな事…」
「…俺は…、そう思うんだ」
勿論そんな事は、微塵にも思っていない。
いや、それは嘘だ。
俺自身は間違いなく、光流に依存しているのだから。
本当の事を言えば、その事に悩んでいた時もあった。
いつかは離れなくてはいけない相手にここまで依存している自分を感じた時、生まれて初めて恐怖を感じた。言葉では言い難い、途轍もなく大きな恐怖を。
別れ離れになる未来を考えるだけで、その恐怖はどんどん増殖して、それを思えば竦んでしまうくらいだった。
それ以上に自分の弱さを思い知らされて、更に恐怖は増し続けた。
光流が側にいなければ。もしかすれば、未来さえも歩めないかも知れない自分。
それどころか、依存する事が、心地よくなってしまった自分。
そして、光流と共に生きていく事を、誰よりも何よりも望んでいる自分。

しかし、それでもいいと思った。
光流が許してくれるなら。
俺を望んでくれるなら。
笑っていてくれるなら。
でもーー。

ーー光流の為なんです。家族と共に居る事が光流の為なんです。


「……」
「忍?」
突然黙り込んだ忍を光流が伺う。
こんな時なのに、明らかに忍を心配しているその表情に、忍の心に鋭い痛みが走る。
「俺はこんな関係を望んでいない」
望んでいる。誰よりも。
「こんな関係は、異常だ」
本当は、それ以上を望んでいる。
同性のお前に求めている。
異常なのは、むしろこの俺だ。
「お前とは、良い友人関係を築いていたいんだ」
「…友人…関係」
その言葉に光流の肩が震える。そして項垂れる様にその視線は床を捕らえていた。
「ああ、友情だ…」
自分の言葉に反吐が出そうだ。
本当はこれっぽっちも、そんな事思っていない。
それが今になって気付かされる。
自分が本音の部分でも光流を偽っている事に、こんな風に今更…。
「その良い関係…。友情とやらは、一緒に住まない、離れなければ築けないものなのか?」
「…そうだ」
我ながらよく言う。
俺が光流に抱いてるのは『友情』なんて、綺麗な言葉じゃない。
死ぬ程、執着している。
誰にも渡したくない。
光流を渡したくない。誰にも、誰よりも。
本当は家族にだって。

本音はこんなにもドロドロしている。光流に邪な想いを抱いている。

ーー俺は友人としてではなく、光流の事が好きなんだから。

でも、だからこそ。

「ーー俺達は離れた方がいい」
「ーーっ!!」
忍のその言葉に光流は、項垂れていた頭を勢い良く起こした。
そして目の前の忍の腕を、力強く掴んでいた。
まるでその行為は、忍を逃がさない様にと。忍が逃げないようにと、何かに祈りを捧げる様で。
「俺達、上手くいってたじゃねえか!」
「……っ」
「二人だったら、何でも思いのまま。最強だったじゃねえかよ! 違うか!?」
捲し立てる光流。
必死なその様に、忍の心が揺れる。
今直ぐにも折れてしまいそうな心。それをなんとか堪え続ける。
「…俺は…これから先。一人で…やって行きたい」
「…なんでだよ? だから、なんでそんな事言うんだよ!」
怒りなのか、悲しみなのか光流の瞳が揺れる。どこまでも陰る瞳。
それを見つめる忍の瞳には、それ以上の闇があった。

ーーそんな顔、させたくないのに。

「…俺にだって、思い描く未来はある」
「…未来?」
「ああ」
俺が思い描く本当の未来。
それは間違いなく、お前とずっと一緒に居る事。
このまま変わる事なく。
ずっと、ずっとーー。
でもそれは、どこまでも儚く、叶わない夢。
「…じゃあ」
「……?」
「その未来に俺はいないのか? これっぽっちもいないのか!?」
「そうじゃない…。そうは言ってない」
「言ってるじゃねえか!」
「ここを卒業して迄、わざわざ同居する必要性が見つけ出せないだけだ」
「……」
「友達付き合いをやめると言ってるわけじゃない」
「……」
「幸い希望大学は同じなんだ。付き合いはこれまでと何ら変わらないだろう? ただ居住が変わるだけで、俺達の関係は変わらない」
何故こんなにも辛いんだ。
昔は嘘をつく事なんて、呼吸するくらい容易い事だった筈なのに。
相手が光流と言う事だけでこんなにも。
こんなにも辛い事だったなんて。
「…分かったよ」
その言葉と同時に、強く掴んでいた腕の力が抜ける。
ゆっくりと下降していく腕。
離れていく指先。
それを胸の痛みとともに、忍は受け止めた。
「よく分かった。俺と住めない理由も。それから…お前が俺と住む気がない事も」
「……」
「悪かったな。なんか気を使わせた」
「いや…」
「ーー友達関係は変わらない。そうなんだろ?」
「…ああ」
「じゃあ…、これからも一人の友達として宜しく…な?」
「…宜しく」



辛くて、悲しくて、心がどこまでも冷えていく。


これで良かったんだと、忍は無理矢理自分に言い聞かせていた。
しかし、偽りの心を埋めてくれるものを、忍は見つけれそうになかった。

季節がゆっくりと動いていく。
このまま俺達の繋がりも、変わってしまうんだろうか?
こんな風に全てが、離ればなれになっていくのだろうか?


[edit]

CM: --
TB: --

page top

2017-08

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。