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『7月メール/七夕にて。』その1 

2008/07/10
Thu. 18:57

七夕メールss。思いのほか長くなりそうなので、分けました。
取り敢えずその1をUP。(七夕メールの続きです)
続きは近日中予定。

七夕メール  /  / 

拍手有り難うございましたv


↓7月メール/七夕にて。↓
7月メール/七夕にて。


その1


今日夕飯、外で食べねえ?
臨時収入があったから奢るぜ?


1時間半程前、忍にそんなメールを送った。


現在時刻5時30分。

ウキウキ気分で光流は、寮から公立図書館の隣接した公園へと向かっていた。
ここからそこまでは30分くらいだ。そして待ち合わせは6時。まさにいい頃合いである。

「あいつ分かってんのかなー。」

今日は七夕。
織り姫と彦星が、一年に一度逢瀬を許される日。
恋人達が愛し合う日だ。

臨時収入があった。
なんて言ってはみたが、それはただの出任せだった。

一年に一度のこの日に、ただ一緒にいたいと。
いつもとは違う、特別な時間を過ごしたいと思った。
誰よりも好きなアイツと。

そう、忍と二人で。


そして、あの日言えなかった事を、どうしても言いたかった。
あの日。
光流が風邪をひいた事によって起きた、忍への多大なる誤解。
全快祝いだと行われた飲み会で知った事実と、自分のどうしようもない程の愚かさ。
そして忍の気遣いと本当の優しさ。
それは誰にも見せない、与えない、光流だけに許された特別な姿。真実の手塚忍の姿だった。
飲み会の後、部屋に帰った光流は結局言えなかったのだ、謝罪と感謝の言葉を。
どうしても言いたいのに、言わなくてはいけないのに。
しかし出来なかった。勇気が出なかった。

だから今日は、それをどうしても伝えたかった。
絶対に。
そして出来る事ならば、自分の気持ちを伝えたいと思っていた。
真実の自分の感情をも、全て伝えたいのだ。

笑顔の向こう側に有る、本当の自分を。
全てひた隠しに生きて来た、真実の池田光流の姿を。
心に巣食っている闇と負の存在を。

本当はいつもいつも、寂しくて堪らなかった。
辛くて痛くてどう仕様もなかった。

それが忍と出会って変わっていったのだ。少しずつ、ちょっとずつ。
生きていていいんだと、教えてくれた。
自分を必要としてくれた。
誰よりも傍にいてくれた。

いらないと捨てられた自分を。
本当の姿をいまだ見せる事の出来ない、意気地なしの自分を。

だから、忍には。
忍にだけには。
受け止めて欲しい。
分かって欲しい。

そして何よりも、忍が好きだと言う事を知って欲しいのだ。


☆ ☆ ☆


図書館までは対した苦も無い距離だが、何分この暑さと湿度が光流を苦しめる。
「あっちーー!」
無意識のうちにそうボヤいてしまうが、煩わしさや辛さは全く感じなかった。
歩くこの先には、アイツが待っている。
そう思えばこの暑さも湿度も、その後にある嬉しさと幸せを彩る通過点の様に思えるから不思議だ。

忍が待っている。この俺を。
そう思う心と身体が歩みを速くさせた。
早く、速くと何かが囁く。

早く顔が見たい。
早く声が聞きたい。
早く忍に逢いたい。

だから。
速く走れ。
速く。速く。
もっと速く。

暑さも何の其のと、いつの間にか全力疾走をしている自分に、苦笑が漏れる。
それほどまでに忍に恋い焦がれ、溺れている事実がそれによって突き付けられている様で、思わず顔が赤くなってしまう。

そんな光流のすぐ前を、髪の長い女が一人歩いていた。
特別な事ではない。光流も当たり前の様にそれを追い抜こうとした。
追い抜き様にその女性の顔を見たのは、ほんの偶然だった。
病的なまでに青白い顔。
何所か悪いんだろうかと、思ったその瞬間だった。
「はあ…っ…」
若い女は小さく息を吐いたかと思うと、その場にしゃがみ込んでしまった。
光流は思わず立ち止まり、声をかけた。
「大丈夫ですか!?」
「…大丈夫です…。すみません」
全然大丈夫ではない。顔色と表情が全てを物語っている。
「病院に行きますか?」
「いえ…。少し休めば大丈夫ですから」
「休めばって言っても…」
住宅街の道のど真ん中である。休める所などはない。
「…うーん」
光流は少し思案した。
「歩けますか?」
「…まだ…ちょっと…」
「吐き気は?」
「いえ…」
そして。
「すみません、ちょっと失礼します」
「えっ…?きゃあ…」
光流は女性を抱き上げた。
軽い。
抱き上げて思った。
そのあまりの軽さに、驚きの声を上げた女性以上に光流が驚いていた。

痩せ過ぎじゃね?

「あ、あの…」
女が訝しげに声をかけている。その表情は体調の悪さとは別物のものが見て取れる。身体中に不自然な力が入っていた。
確かに今の自分は怪しい気がする。
突然知らない男に抱き上げられたら、誰でもそう思うだろう。
取り敢えず誤解を解かなければと思った。
「この先に公園が有ったと思うんです。そこならベンチもあると思うし…。ここよりは休めると思いますよ?」
「…はあ」
「自力では動けないですよね?」
そう言われて女性は今の状況を飲み込み、身体の力を抜いた。そして光流に一言声をかけて来た。
「…すみません。お手数かけます」
「いえ…」
誤解が解けた事か、本能か(モテル人間故の)光流は女に向けて笑顔を送った。
それを見た女の頬が見る見るうちに赤くなる。

やべ…。またやっちまったか、俺?

分かり過ぎるくらい、自分の容姿の良さを知っている。
そしてそれ以上に、女運の無さも嫌と言う程自覚がある。

これ以上は、モテスキルを封印しておこう…。

出来る事かはこの際置いといて、光流はそう思い、苦笑した。
その憂いの(?)表情を女がうっとりとした目で見つめていた事には、光流は全く気が付かなかった。

そして光流は女性を抱えたまま、近くの公園へと歩き出した。
時刻は、6時を回ろうとしていた。


続く。

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