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心が揺れる日/SS 

2008/08/07
Thu. 17:34

ブログSS更新します。

以前書いた『始まりの日』シリーズの第三弾。
『心が揺れる日』です。

1 始まりの日
2 手を繋ぐ日


このシリーズの二人はまだまだ友達以上恋人未満から脱していないので(光流はつき合っている気でいますが)ゆっくり、でも確実に関係を進めていければと思って書いています。

季節感がおかしいですが、まあそれはそれで…。
一応、以前話した隣りのクラス萌えで書いた話です。



桜吹雪が誘う。
まだそれに触れたくはないのに。


心が揺れる日。


桜の花が散り始めるこの季節。俺たちは3年生になった。
成績順でクラスが決まるこの緑都学園。
当たり前の事だが、俺はA組になった。当然3年間A組だ。
そしてここ最近、俺の悩みの種の元凶であるあいつは…。

「うわ…。何だよ! あと一番だったのかよ!!」
新しいクラスが発表された朝。貼り出されたクラス表の前でそう言って、盛大に叫んでいた。
「忍、俺B組だって…」
「そうみたいだな」

ーーB組 池田光流。

俺の目はその名をしっかりと捉えていた。
「あと一番…」
「そうだな。あと一番で同じクラスだったな」
「ちくしょーー!!」
クラスの分け方は、成績が1番(俺)はA組、2番はB組と言う風に分けられている。クラスの偏差値を均等に分ける為だ。
そして緑都はG組(7組)まである。光流の去年の成績は8~10番くらいだった。光流がB組という事は、去年の成績の平均は9番だと分かる。
「あーあ。何で同じクラスじゃねえんだよ…」
「まったく。クラスくらい、別でもいいだろうが」
四六時中一緒にいるくせに…。こいつは。
「クラスくらい!?」
「ああ」
「お前なあ。俺がこの日をどれだけ心待ちにして、頑張って来たのかを知らないのか!?」

ーーそんな事、知るか。

「…クラスが一緒なら、席も隣に座って、授業中は手紙まわしたり、アイコンタクトしたり、こっそり手をつないだり…。グループ研究とかも勿論一緒、あと体育祭や学園祭、行事という行事二人で過ごして忘れられない思い出を…。」

手紙、アイコンタクト。手を繋ぐ…。
そんな事俺がすると思っているのか?

グループ研究。
一体、何を研究する気だ?

行事という行事二人で過ごす…。
どんな思い出を作り上げる気だ。このバカは。

ーー頭痛がして来た。

正直、こいつの『オカシイ妄想』には、これ以上つき合っていられない。
「ま、残念だったな。そう言う事で、俺は新しいクラスに行くから。じゃあな」
「あっ! 待てよ、 忍!!」
追いすがってくる光流を完全無視と決め込んで、俺は歩き出した。

あいつは本当にバカだ。
年がら年中、あんな事ばかり考えて。
「本当にあれで、学年9位か?」
あいつに負けている成績10番以下の人間に、心の底から同情してしまう。

『あーあ。何で同じクラスじゃねえんだよ…。』

同じクラスだろうが、隣りのクラスだろうが所詮、帰る所は同じ場所だというのに。
たとえクラスが違っていたとしても、それは変わらない。
変わらない、けれど…。

「隣のクラス、か…」

早足で歩を進めながらも、俺の中には一つの感情が渦巻いていた。
まるでそれは、何かに対して失意しているようで。

「…がっかりしている、だと?」

だがその理由は、これ以上なく簡単に導きだされて。

「まさか…な」

ゆっくりと首を振る。何かを振り払うかの様に。
しかしそれは消えない。
それどころか、強く強く増していく。
まるで水の中に落とした一滴の黒いインクの様に。
静かに静かにその水面を染めていく。
心の水面に、正体の知れない何かかがゆっくりと広がり、その色に染め上げられていく感覚。
そして同時に思い出される、先程の光流の言葉。

『俺がこの日をどれだけ心待ちにして、頑張って来たのかを知らないのか!?』

「…もう一番くらい、何とか頑張り通せよ…。ばか」

思わず呟いてしまった言葉に耳を疑う。
自然と右手が自分の口を塞ぐ様に覆っていた。


今自分は、何を言って…。何を思った…?


玄関ホールの入り口付近で、歩みは自然と止まってしまった。
処理しきれない感情がぐるぐると渦巻く。何かが心の奥底で溢れ出しそうになっていた。
「たくっ。待てってば!」

ーービクッ!

突然背後で聞こえた声に、驚きを隠せなかった。
強張り、震える肩。
速くなる鼓動。
止めどない熱を持つこの身体。
振り返る事が出来ない。いつもの様に上手く答える自信がない。
自然に身に付いているポーカーフェイスを、今は作り出す事が出来ない。
「忍?」
伺う様な声が聞こえる。
目の前に回り込んで、俺を覗き込もうとする気配を感じた。
今この顔を見られたら、勘の良いこいつの事だ、何かを感づかれるかも知れない。
全ての感情を多い隠す様に、不自然な程、俯いてしまう。
「どうした?」
不審に思っている声が耳に入る。
どうやってこの場を切り抜けようかと思い悩んでいる時、他方から声が聞こえた。
「おーい。光流ー!!」
正直助かったと胸をなで下ろす。
光流の名を呼ぶその声の主に視線を合わせようと、顔を上げた。
一瞬、光流と視線がぶつかる。
計り兼ねている顔が目に入り、戸惑う。
とにかく悟られない様にと、その視線を無理矢理振り払った。
何か言おうとする光流を感じたが、声の主が近づいて来た事によって、それはかき消された。
「はよっ!」
「ああ、はよー」
光流と笑顔で挨拶を交わす人物を静かに眺め、頭の中の記憶回路を動かしてみる。

去年、光流のクラスメイトだった奴だ。

光流はよくこいつと行動を共にしていた。そう言えば、光流からもよく話を聞いた気がする。
自分に対する感情とは違う物だが、こいつの事も大切に思っているのだろうと目の前の二人を見つめ、そう思った。
瞬間、苦い気持ちがこれでもかという程に込み上げた。
まるで、吐き気を伴う様な不快感。じくじくと全身に広がる痛み。
そして何よりも、どうしようもない位に居心地が悪かった。
そんな自分をよそに、目の前の二人はにこやかに話をしている。
光流に笑顔で話しかけるそいつの顔が、とても不快だった。それ以上に、笑顔でそれに答える光流に対しては殺意が湧きそうだった。
「お前B組だろ? 俺も同じB組だったんだ! 今年も一年間よろしくな!」
「ああ、そうなんだ。こちらこそよろしくな!」
「じゃあ、教室で!」
「ああ、またな」
「……」
立ち去っていく光流のクラスメイトを無言で見送る。
胸の内には言葉では説明のつかない気持ちが燻っていた。
「…よかったな」
「へっ?」
「仲のいい奴が同じクラスで」
「……」
光流の視線が俺を捉える。
じくじくとした痛みがまたぶり返していた。
「あいつとすればいいじゃないか」
俺は何を言い出してるんだ。
これじゃあまるで…。
「手紙まわしたり、アイコンタクトしたり、こっそり手を…」
「するわけねえだろ」
「……」
「お前以外の奴とそんな事、するわけねえだろう」
「……っ」
これじゃあまるで…。
嫉妬してるみたいじゃないか。
「忍…」
「……」
「どうしたんだよ?」
それは誰よりも俺が聞きたい事だ。
どうしてこんな事を言い出してしまったのか。
この苦々しい気持ちは一体何なのか。

まさか…。いや、そんな事がある訳がない。


キーンコーン、カーンコーン。

予鈴が鳴り響く。
とたんに、玄関ホールは騒がしくなった。

「…予鈴だ。行くぞ」
平然を装い光流に声を掛ける。
装えてない事は誰よりも分かっていた。
「…えっ、ああ…」
光流がそう答えた。
その声には俺に対する疑問の色が、色濃く残っていた。

ーーー。

その時一陣の風が、光流と俺の間を吹き抜けた。
目の前の光流を桜吹雪が覆い隠す。
「うわっ…」
「……」
風と桜に乱された前髪をかきあげる。
その指先から桜の花びらがはらりと風に舞い散る。
それは余りにも美しくて…、何よりも美しすぎて…。
目の奥と心の奥底に焼き付けられたその記憶。

息を飲む程美しいその光景に。俺は目を奪われて…。心を攫まれて…。

「忍?」

ーーもう逃げれないかも知れない。

桜の花びらが散り際の儚さを見せつける。
美しい桜吹雪が俺を誘う。
止めどなく強い、魅惑的なその力で。


ーーまだそれに気づきたくないのに…。


桜と共に訪れたこの気持ち。持て余す微熱。
まだこの感情の正体を突き止める勇気が、俺にはなかった。


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