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4000hit。お礼ss。 

2008/09/26
Fri. 23:16

4000hit越えしました!有り難うございました!!

ささやかなお礼ではありますが、訪問して下さった皆様に感謝の気持ちを込めてssを書きました。宜しければ読んで頂けると幸いです。


実はこの後は、webラジオの『あの話』に続く様な…、かんじで。(そしてその後、社会人編が…みたいな)
タイトルはB'zの『春』から(まんまだ)この曲聞いて(妄想膨らまして)書きましたので。







3月。
春の訪れを感じ、その先にある別れをこの身に感じるこの季節。
大学生活最後の難関である卒論を提出してしまえば、消化試合の様に後は卒業式を迎えるだけ。
早々と就職の内定を手にしている自分が出来る事と言えば、この生活の終わりを見届ける事だけだ。

そしてその卒業式さえも滞り無く終わってしまえば、文字通り『別れ』が待っている。

この生活が終わる。
好きな相手を誰よりも身近に感じる、この当たり前に送っていた『幸福な日常』が終了を告げる。
そう、忍との別離が待っているのだ。
近すぎて、何よりも大切すぎて、言いだせなかった。この気持ち。感情。恋情。

『居心地』が良すぎて。
二人の『絆』が強すぎて。
それ以上に『好きだ』という気持ちが大きすぎて。
何一つ壊せなかった二人の関係。信頼。友情。
そんな思いが頭の中を巡り、『好きだ』と、どうしても言い出せなかった。

想いだけが心の中で空回りし、その気持ちは膨らみ続ける一方で、拒絶された時の失う物を思い描けば、心がどうしようもない程に冷えて行く。
臆病な自分は結局、奪う事も壊す事も出来ずに、ただ後悔する事だけを許され、未練という名の日々を送って来た。
「本当に…、バカだな」
そんな事を今更思いながら、ため息とともに、4年間を過ごした『二人の部屋』を振り返り見てみる。
「……こんなに広かったのか」
引っ越しの準備が整った部屋はただ広くて、見知らぬ空間が静かに広がっていた。

今日この部屋を後にするのだ。
光流は就職先の会社近くのアパートへ。
忍は長野の実家へと。
そして二人は違う道を歩き出す。
もう交わる事は無いのかも知れない。
「……っ」
忍が居ないかも知れない未来を感じて、どうしようもない程、心が寒くなる。
自分にとって忍という存在がどれだけ大きな物であったかと言う事を、身を以て知る。
これからは辛くても、悲しくても、忍は側にいない。支えてはくれない。
それ以上に嬉しくても、楽しくても、それを伝える事さえ、一緒に感じる事さえも出来ない。
「……嘘みたいだ」
居て当たり前。
同じ様に感じて当たり前の存在。
それなのに…。



ーーがちゃっ。

年期を感じさせるドアノブの回る音と共に、その想い人である忍がドアの向こう側に姿を見せた。その手にはボストンバックが握られている。
そして、ぶつかる二つの視線。
「どうかしたか?」
「…いや。何でもねえよ」
「荷物は新居に無事届いてるそうだ」
「そう…」
滞り無く進む作業と予定。
こんな時は予想外の出来事や、不具合が起きても良いのに。
そうすれば…。
全く馬鹿な事を考えてしまう。
光流は自分の愚かな考えに思わず、苦笑をした。
そんな光流を静かに見つめていた忍は、重苦しい空気の中、そっと口を開いた。
「…そろそろ出るよ。新幹線の時間があるから」
「…そうか」
光流はそう答え、ドアへと向かいながらも何かを言いたかった。忍に対して、最後に何かをと。
しかしその気持ちは空回りし、光流は何も言う事は出来なかった。
そんな光流を見つめていた忍も、一瞬口を開こうとしたが、結局何一つ話す事は無かった。
二人の言葉を飲み込む様に、錆び付いたアパートの階段の音だけがその場に響いていた。


そして二人は部屋を後にした。
4年間を共に過ごしたこの部屋を。
この部屋には全て詰まっている。
喜びも悲しみも。
痛みも幸福も。
そして行き場の無い想いさえも。

今更女々しい感情に浸食されまいと、光流はそれを二度と振り返らなかった。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



駅に着けば、忙しく行き交う人々が通り過ぎる。
彼らは今日も、昨日と同じ日常を送っているんだろうかと、何気なく思う。
自分は幸せだった日常を、今終えるというのに。
思わず感傷的な思いに負けそうになる。そんな気持ちを振り払う様に、光流は首を振った。

そして、新幹線時刻表の電光掲示板を見つめ、忍が光流へと向き合う。
「じゃあ。そろそろ行くから」
「……うん」
「光流?」
「……」
「どうかしたか?」

別れたくない。
離れたくない。
忍と離れたくない。
こんなにも、こんなにも。
今更どうしようもない感情が胸を刺す。

「…なあ。…また、会えるよな?」
「…当たり前だろ」
「…だよな」

でも、それは絶対じゃない。
もう会えないかも知れない。

「じゃあ、またな」
「ああ」

その微笑にも。

「連絡…しろよ?」
「ああ」

静かに響く声にも。

「その…、頑張れよ?」
「お前こそ」
「…うん」

好きだ。
こんなにも俺は。
忍が好きだ。

「名前…」
「ん?」
「名前、呼んでくれねえ…?」
「名前?」
「うん。聞きたいんだ。もう一度」

光流は静かに忍を見つめた。
そんな光流を忍も見つめ返す。
そして。

「…光流」
「うん」
「光流」
「うん…」
「光流…」
「…うん、有り難う。…忍、お前に会えて良かった」
その言葉に忍は一瞬、驚き顔を見せた。


ーー俺だけが知ってる顔…。


光流はそんな忍を見つめ、笑顔を向けた。その笑顔につられる様に忍も微笑みを浮かべる。

「…こっちこそ。ありがとう、光流」

そして忍は控えめに手を振りながら、改札へと消えて行く。
その姿を笑顔で見送り、光流は一言だけ呟いた。

「ーー好きだよ。忍」

その言葉はけして忍には届かない。
遠くなる。
見えなくなる。
もう触れられない。
この世で一番好きな人。大切な人。
「………」
人知れず涙が一筋、零れ落ちた。
光流は慌てて目元を乱暴に拭い、外来線ホームへと歩みを進めた。
消える事の無い秘めた想いが、その心を熱く焦がしていた。

この次、もし会える日が来るのなら。
その時は離さない。
かならずお前を手に入れるから。
だからその日までさようなら。
どうかその日まで幸せでいて。


ーー誰よりも、何よりも、お前が好きだよ。忍





改札をくぐり、新幹線乗り場へと歩みを進めていた忍は、ふとその足を止め、瞳を閉じた。それから次の瞬間、勢い良くその瞼を開いた。
そして、まるで何かに突き動かされる様に、今来た道を走り出していた。
多くの行き交う人の波に逆流するその動きは、忍の力を持ってしても中々前に進めない。
それでも忍はそれを止める事をしなかった。ただひたすら来た道を戻り続けていた。

それからやっとの思いで改札口に戻って来た忍は、そこから見える駅構内を必死で目を凝らし、探した。
勿論、今別れたばかりの光流を。
「…光流」
しかしそこにはもう、光流の姿はなかった。
乱れる呼吸を整え、忍は苦笑した。自分らしからぬその行動に。そしてそれ以上に、本音を言い出す事さえ叶わなかった臆病な自分の無様な姿に。
「………好きだよ…。光流」
届かない。
多分、その気持ちは二度ともう。
そして忍は振り返る事も無く、もう一度新幹線ホームへとその歩みを進めた。
人知れぬ想いを、その身に静かに抱えたまま。

この次、もし会える日が来るのなら。
その時はきっと伝えるから。
好きだと。お前が好きで好きで、しょうがなかったと。
だからその日までさようなら。
どうかその笑顔を絶やさないで。


ーー好きだよ、光流。この世の誰よりも。




それから二人が出会うのは14年後。
寮祭兼、緑都学園同窓会にて。


「久しぶり。何年ぶりだ?」
「さあな。来るなら来るで、もっと早く来いよ!」


運命の女神がそっと微笑む。
その時運命の輪は、またこの二人を中心に回りだす事になる。
それはまた別の話。


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2017-06

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