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寒い。でも美味い。 

2009/01/19
Mon. 18:40

寒いですね、こんばんは。

突然ですが、最近『たいやき』に、はまっております。
近所にとても美味しいたいやき屋さんが出来て、通っております。(太るー/怖)
あんまり甘い物は得意ではないのですが、そこのたいやきはあんこが程よい甘さで私でも1個食べ切れます(普通は娘と半分こ)
人気がある様で週末はいつも行列が出来てます。
その行列に並びながらちょっと妄想。そしてss出来ました・笑

一生懸命たいやきを焼いている店員さんをしり目に、にやにや妄想する客(嫌な客だ)
自分に順番が回って来た時、客が妙に嬉しそうだったのは、『やっとたいやきが食べれる』という気持ちだけじゃなかったですよ。(本当に嫌な客だ)


という訳でss『寒い日の幸福』です。
宜しかったらどうぞ。
書いてたら、もの凄ーくたいやき食べたくなりました。(昨日食べたのに)

「あんこたっぷり、幸せ一杯。美味しいたいやき、お一ついかがですか?」



寒い日の幸福



冷たい風が吹き荒ぶ、寒い日。
こんな日は、学校から寮への短い距離の帰宅さえもかなり辛い。
「さみーい!」
「そうだな。寒いな」
どう聞いてもそうは聞こえない忍のその返答に、光流は不満の声をあげる。
「全然、そうは聞こえねえ」
「そうか? まあ、まだ今日の寒さ位なら堪えれるからな」
「雪国育ちはこれだからな。羨ましい」
忍の実家は、実際は雪国というほどの場所ではないが、その事を突き詰めて話す必要はないので、取りあえずそこは黙っておく事にした。

道すがら、『寒い寒い』と連呼する光流を、仄かに微笑みながら見つめ歩く。
小さな幸せ。忍だけが感じる寒い日のちょっとした幸福。
「あーーっ!!」
その時突然、指を差しながら叫び声をあげる光流。
「…?」
その声に驚き、つられる様に忍は光流が指し示す先を見つめた。

『オープン!!美味しいたいやき屋』

看板に大きく書かれた文字。背景にこれまた大きなたいやきが描かれている。
プレハブとも言わない、オープン作りの小さなたいやき屋。
人が二人も入れば、店内は足の踏み場も無さそうだ。
実際、店内に二人の店員が働いているが、端から見ても窮屈でとても狭そうだ。
「そうだ!クラスの奴が言ってたんだ。今日たいやき屋がオープンするって」
「へー」
相変わらず、食に対しての光流の情報網は凄まじいらしい。そこは忍さえも叶わない時があるくらいだ。
「美味いのかな?」
「どうだろうな?」
店内前には数人の人だかりが出来ている。いわゆる行列という程ではないが、ある程度の集客が伺える。出足としてはまずまずのようだ。
「買ってみようぜ!」
言うと思った。
忍は溜め息をついた。
「寮に帰ればすぐに晩飯だろう?」
「もたねえの」
その目はランランに輝いていて、手には早くも財布が握られていた。
その様を見れば、もう何を言っても無駄な気がする。
「…好きにしろよ」
「よっしゃ!!」
光流は足取りも軽やかに、たいやき屋の人だかりに走りよる。それを呆れ顔で笑って見ていた忍だったが、列に並び終わった光流に、それこそ大きな手招きで呼ばれる。
「……はあ」
白く色付く溜め息一つ吐き出し、忍は光流の元へと歩みを進めた。


光流は並んでいる間中、忍にたいやきの持論を聞かせ続け、たいやきはこんなにも素晴らしい食べ物だと諭し続けていた。
「ということで、冬はこれなわけだよ。忍くん」
「はいはい」
「あ、お前なあ!」
「ほら、順番きたぞ」
忍が言う様に、目の前の客が切れた。
途端に、子供の様な嬉しそうな顔付に変わる光流。
その様を見つめて、忍もとても嬉しそうに微笑んだ。
「2つ下さい!」
笑顔の光流とは裏腹に、曇る店員の顔。
「申し訳ありません。本日分はあと1つしかないんです」
「えっ!!」
店先には、『営業時間に関わらず商品が売り切れ次第、閉店します』の文字。
本日の寒さも手伝ってか、オープン日の今日たいやき屋は、閉店時間の2時間も前に売り切れらしい。
客も今は光流と忍の二人だけ、いい時に商品が切れたなと忍は思った。二人の後ろにまだ誰かが並んでいれば、それは悲劇だ。
「マジで…」
先程とは打って変わって、とても悲しそうな光流の表情。忍はそんな光流の肩を手でポンと叩いた。
「俺は別にいらないし、お前が食べれればいいんじゃないのか?」
「でもな…」
まだ上がる不満の声。その声を無視して忍は店員に声を掛けた。
「1つお願いします」
「はい、本当に申し訳ありません。有り難うございます」
そのまま忍は店員からたいやきの入った紙袋を受け取って、それを光流に手渡した。
そこには何故か悲しそうな光流の顔。
食べたい物が食べれるのに、どうしてこんな顔をするのか忍には全く解らない。





たいやき屋を後にして、また二人は下校を始めた。
忍は前方を、そして少し遅れて後方に光流が。同時にガサガサと紙袋を漁る音が聞こえた。
わずかな時間が過ぎ、そろそろ光流の『美味い!!』もしくは『最高!!』の声が上がるのを、忍は黙って待った。
しかし、一向に上がらないそれらの声。
忍は不思議に思って、光流を振り返り見た。
「忍、ほれ」
「何だ?」
「だから、たいやき」
そこには半分になった、たいやき一つ。鯛の頭部分。
それを笑顔で差し出す光流の姿。
「頭の方やる。そっちの方が美味いけどな。しょうがねえ、忍の為だ!」
わざとらしい程、演技掛かった言い方で、光流は惜しそうにそう話した。
正直、どこが自分の『為』なのかは解らないが。
「何でだ? だから俺は別に…」
忍のその否定の言葉を、光流は遮る。
「一緒に食べたいの。俺が」
「……光流」
「だから、ほい!」
そう言って強引に渡されるたいやき。
それはとても温かくて。
寒さで冷えきった忍の指先をそっと暖めた。



「美味い!」
並び歩くそこには、笑顔満開の光流。
はふはふと、熱いたいやきを頬張る。
それを横目で見つめ、忍も一口頬張った。
途端に広がるあんこの甘みと温かさ。
「どうだ?」
「ああ、美味いよ」
「だろ!!」
正直言えば、甘いものが得意ではない忍だ。
忍には甘過ぎるくらいの、このたいやき。
本当は欲しかった訳じゃない。出来れば遠慮したいくらいだった。
でもーー。
「…甘さも量もちょうどいい」
「そっか!」
光流はいつの間にか平らげてしまっていた。
元々大食漢な光流だ。それでなくても小さなたいやき一つ。しかも今は半分こ。
「お前は、足りないんじゃないのか?」
「いいの。忍と食べる方のが格別」
満面の笑みで頷く。とても幸せそうな笑顔。
忍は光流のその表情に、思わずあんこが喉に詰まりそうになる。

ーー飲み物が欲しいと思ってしまった。




やっとの事で、忍がそれを食べ終えた時には、寮が目の端に見え始めていた。
その手には缶コーヒー。二人で一つと自動販売機で買った、温かい缶コーヒー一つ。
買い食いも、それどころか、歩きながら物を食するなんて普段なら絶対しない忍だが、今日はそれが何故かとても良い物に思えていた。
故に、気付かないうちに、それは口をついて出てしまう。
「ーー知らなかった」
「ん?」
不思議顔の光流。
忍の手から缶コーヒーを受け取り、それに口につけながら、聞き返す様に声を出した。
「食べ物を分け合う事が、こんなに悪く無いものだとはな。相手がお前だからかな?」
「ーーぐっ!!!! げほげほ!!」
「どうした? 大丈夫か?」
突然むせた光流に、忍が驚いて声を掛ける。
「…どうしたって…ごほっ…、お前が!!」
「俺が?」
むせた所為か、光流の顔は真っ赤だ。
げほげほと言いながら、自分の胸の辺りを叩いている。
「…いや…、何でもねえよ…」
「変な奴」
「やかましい!」
叫ぶ光流。
まだその顔は赤い。
まるで高温の熱が出た様な、その赤さと熱さ。
それ以上に、ぽかぽかしたこの気持ち。
先程まで感じていた身を切り裂く程の寒さを、光流は今感じなくなっていた。






冬の寒さが変わらぬ、後日ーー。

「先輩!!たいやき食べようよ!」
「瞬、お前なあー。これから夕飯なんだぞ!」
「いいじゃんーー。ね、先輩達は賛成でしょ? ねっ!ねっ!ねーってば!?」
ねだる様にしなを作る後輩と、それを見つめる呆れ顔のもう一人の後輩。
まるで漫才を見てる様な気分で、それに笑って答える。光流と忍の先輩二人。
「別に、いいぜ」
「ああ」
「わーい!!じゃあ4個買ってくるね!」
途端に駆け出そうとするその姿。横目で光流を見つめ、忍は思わず噴き出しそうになった。

ーーあの時と同じだな。

「おっと。瞬、ちょい待ち」
そんな忍を露知らず、光流は瞬に声を掛けた。
「なあに、光流先輩?」
振り返りながら光流を伺う。そんな瞬を見つめながら、ここに居る光流以外の人間は、『1個じゃ足らないんだろうな』と、光流の次の言葉を推測していた。

『夕食前なのに光流先輩…、せめて2個までにしといた方が』
『2個かな? それとも3個? まさか5個とか?』
『何個食う気だ、こいつは?』

しかし、おのおの思ったその思考は、却下される。
「買うの3個で。俺、そんなに腹減ってねえし」
「はっ?」
「えっ?」
「……」
さっきから『腹減った』と連呼している人とは思えない台詞に、ここにいる全員(光流を除く)一様に驚く。
そんな驚き達を物ともせず、光流は忍に笑顔で向かい合う。
「ーーでだ。忍、半分こにしねえ?」
「……」
ーー唖然、絶句。
しかしそこには、眩しい程の笑顔。
絶対勝てない、その無敵の笑顔。
「な?」
「…ああ。それは構わないが」
「決まり!」
そのまま瞬に向かい、数量訂正を完了させる光流。
そして呆れた様な、諦めた様な笑顔を振りまいて、後輩二人は行列へと駆け出した。


誰もいなくなった空間。二人が佇むこの場所。
目の前の少し離れた所には人だかり。賑わう人々。

「寒いな」
「ああ、そうだな」
二人は寒さに凍える振りをしてそっと寄り添い、指先と指先をわずかに絡めた。


寒い日の幸福。
一つを二人で。二人で一つを。
君と僕とで半分こ。



「本日も全て完売しました。またのお越しをお待ちしております。有り難うございました。」



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2017-08

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